俺が反対しようとするのを遮って、兄貴が声を発する。
「…若頭の立場としては…賛成です。」
「は……?おい!
兄貴…何言ってんだよ!」
俺が兄貴に怒鳴ると、黙れとでも言うように親父は鋭い視線でこちらを睨む。
さすが全国屈指の組のトップだ。
軽い睨みだけでも怯んでしまう。
…でも、絶対負けねえ。
ここだけは、絶対に引かねぇよ。
「…ふざけんな。
組の勢力拡大のために、娘を売るのかよ!?
兄貴もどうかしてる。妹を見捨てるなんて…
そんな薄情な奴とは思わなかった。」
どこの馬の骨かもわかんねぇような奴に、結衣は絶対に渡さない。
こんなクソみてぇな婚約、俺が絶対に──…
「───…おい、佑。
俺は若頭としての意見を聞いてんだ。
…今のは弟…───男としての意見だろ?」
─────ドクン…
親父の射抜くような瞳に、心臓が鈍く鳴った。



