そんな俺に呆れたのか、背後から棗の深いため息が聞こえてくる。 「…禅。何があったの?」 いつものように優しく… だけどいつもより少し低い声色。 「…だから、手元が狂ったって……」 「────…結衣ちゃんにでも会った?」 !? 棗の言葉に、思わず勢いよく振り返った。 涙に濡れた頬をみてギョッとする雄大。 一方棗は、「図星か。」と困ったように笑う。 「なんで…」 なんでわかったんだ…? 病院内で会った? それなら、まだ結衣は近くに…?