「…忘れたよ。」
しっかりと彼の目を見て言った。
冷静に、淡々と。
自分の感情を押し殺して…
「だったら…なんでそんな顔するんだよ…
“忘れた”なんて言うなら…
そんな泣きそうな顔するんじゃねぇよ…!」
悲痛な彼の表情に胸が締め付けられる。
…無理だよ。
忘れられるわけない。
だって…こんなにも愛してるのに…
押さえきれない想いに、涙が溢れた。
禅くんが好きで…大好きで…
ただ一緒にいられるだけでよかった。
それなのに─────…
「…結衣……。
頼むから、戻ってきてくれ……。」
微かに震える弱々しい声。
遠慮がちに私に触れる冷たい手。
……そんな彼を、私は抱き締めずにはいられなかった。



