悲しそうに眉を寄せる禅くん。
今すぐに抱き締めて、好きって言いたい気持ちをぐっと堪える。
「…こんなこと、二度としないで。」
自分の本当の気持ちを隠すように、わざと冷たい態度で突き放す。
やっぱりダメだよ…
あの日の…
禅くんに別れを告げた日の二人の顔が、脳裏に焼き付いて離れない。
昴兄や佑には、もう二度とあんな顔はさせない。
悲しい思いなんて、絶対にさせない。
私はその気持ちが揺らがないように、ぎゅっと目を瞑る。
「お前は…忘れられるのか?」
低く掠れた禅くんの声が、二人だけの空間に響く。
カーテンの外から聴こえる看護師さんたちの声。
慌ただしい救急室の中でも、私の意識は目の前の彼にしかなかった。



