「あ、あの!
わわ私を誘拐しても、何も得しませんよ!?」
私の精一杯の抵抗だった。
『得しない』なんて、本当は嘘だけど。
だっておじいちゃんは社長だし。家は極道だし。
逆に誘拐される理由が思い当たりすぎて怖いくらいだ。
でも、この人たちはそんなの知らないはず。
てゆーか、知らないって信じたい。
「………ぶっ…あはははっ!!」
不意に助手席から聞こえた盛大な笑い声。
隣の朝比奈さんも笑いを堪えているのか、下を向いて微かに肩を震わせている。
え、私…なにかおかしな事言った…?
「誘拐って…ククッ…
やっべぇ…。腹痛てぇ…っ…。」
「ダメじゃん、禅。
俺たち誘拐犯だって思われてるよっ…」
大爆笑する二人に「うるせぇ。」と、急に不機嫌になる月島さん。



