「……唐沢…結衣、です。」
そう答えた私は、決して愛想がいいなんて言えない。
そんな無愛想な私にも、
「結衣ちゃんか。可愛い名前だね。」
…なんて微笑んでくれる朝比奈さんは、たぶん優しい人なんだと思う。
誘拐犯の一味とは思えない…
「あの…朝比奈さん。
私、はやく帰らないと…。」
さっきお母さんに連絡してから随分時間が経ってしまった。
きっと心配してるよね。
「んー…そのまま帰す訳にはいかないし…。
……どうする?禅。」
「…倉庫に行け。」
月島さんは相変わらずの命令口調で運転手さんに言った。
そんな月島さんに、運転手さんは「はい。」と返事をして車を動かす。
え!?ちょ、ちょっと待ってよ…。
倉庫ってなに…?
私家に帰らないといけないんだけど!
さっきそう言いましたよね!?
…まさか!
本当の本当に誘拐されちゃうの!?



