「禅くん…………しよ…?」
「は…?」
いつもの、無意識に出た声じゃない。
今日はこう言おうって決めてた。
最後に、禅くんに抱かれたいと思った。
…お別れする前に、彼の温もりを知っておきたかったから。
「…意味わかって言ってんの?」
禅くんの問いに、ゆっくりと頷く。
女の子からこんな事言うのって、引かれちゃうのかな?
慣れてる女だと思われる…?
恐る恐る禅くんの様子を伺うと、一瞬あった目をすぐに逸らされた。
「お前…簡単にそういう事言うなよ。
俺じゃなかったら本当に襲われてたぞ?」
抱き上げていた私をそっと床に下ろすと、禅くんは私から離れてベットに座る。
ちがう…冗談なんかじゃない…。
私は本気で……
私はカバンの中に忍ばせていた〝あるもの〟を取り出して、彼に投げつけた。



