いつもより低いその声に、サーっと血の気が引くのがわかった。
「お、お手柔らかにお願いします。」
壁ドンといえばドキドキ展開なはずなのに…
今の私は違った意味でドキドキしている。
怖いです、禅さん。
ビクビクする私をじっと見つめる禅くんは、ふっと優しく笑って、チュッとキスをする。
「何ビビってんだよ。
…まだまだこれからだけど?」
妖艶な笑み。
優しく細めた切れ長の目に、片方だけ上がった口角。
普段は見せない彼のその表情に、私の体温は一気に上昇した。
真っ赤な顔を見られるのが恥ずかしくて下を向くと、彼は私を軽々と抱き上げ、それを許さなかった。
いつもよりはるかに高くなる目線。
いつもは見上げる禅くんの顔も、今は少しだけ見下ろすようになる。
私の脚が禅くんの腰に巻き付くような格好で、密着度もかなり高い。



