「禅くん、好き……。」
いつものようなおふざけじゃなくて、真剣に伝えた気持ち。
禅くんにも、好きって言って欲しかった…
なのに……
「はぁ…勘弁しろよ…。」
聞こえたのは深い溜息と、〝好き〟とはかけ離れた言葉。
そんな彼に、涙を必死に堪えた。
やっぱり、さっきの勘違いじゃなかった…。
私がワガママだから、嫌いになった…?
涙で滲んだ目を見られたくなくて、俯きながら離れようとすると、
今度は彼に腰を引き寄せられて…。
ビックリして顔をあげた私の目を、彼の漆黒の瞳が捕らえる。
瞳から涙が零れると、それを指で優しく拭った彼は私の唇にそっとキスをした。
初めてのキス。
禅くんの唇は私のより冷たくて、なんだか少しくすぐったかった。



