妥協した言葉を口からこぼした。


意気地無しの俺の精いっぱい。
好きだ、も言えないダメな男。


いつか、好きだと言える日が来るのだろうか。
藤村が俺の目を見て笑ってくれる日がきたら。
もう一度、笑ってくれたら。


名前が似合うと伝えた日。
彼女は俺に向かって微笑んだ。
ただ、微笑んだ。
名前のごとく、桜のような笑顔だった。


あの笑顔をもう一度見られたなら。
俺はこの気持ちを伝えよう。
周りの目なんて気にせず、君に好きだと伝えよう。


君が俺の名前を呼ぶ。
だから、俺は君の名前を呼ぶ。


「桜。」