とてもとても、芯のある強い人。


「はい!」


茅野くんみたいに真っ直ぐでもないし。
きらきら輝いているわけでもない。
相変わらず卑屈だし、ブサイクだし。
なんの取り柄もない私だけど。
こんな私と友達になってほしいって、
そう茅野くん自身が言ってくれてるんだから。
私も、逃げてばかりじゃいられない。


「なら、友達記念に名前で呼ぼうぜ。」


仲のいい奴は名前で呼ぶ主義なんだ、と笑って言う茅野くん。
自分の名前は大嫌いでいい思い出なんてない。
でも、ひとつだけ、ある。


良い名前だって、似合うって言ってくれた。
あの、人生でいちばんきらめいて見えた日。
茅野くんが、私の名前を褒めてくれた日。
あの日から私は、茅野くんに恋をしていたんだ。


ここがスタート地点になる。
今までマイナスだった場所から、今日やっとゼロ地点に立つ。
まずは友達から始めよう。
茅野くんと、私の、友達記念日。


そしていつか、私が自分に自信が持てるようになった時。
茅野くんの事を胸を張って好きだと言えるようになった時には。
私、自分の気持ちを伝えるよ。
君の名前を呼んで、好きだと。
そう、伝えるよ。


大きく息を吸った。


何度も何度も心の中で唱えた名前。
予行練習はばっちり。


後は、君の名前で呼ぶだけ。
きらきらした君の名前。
初めて、名前を呼ぶ日。


胸いっぱいに空気を吸い込み。
私は、下手くそな笑顔を浮かべて呼んだ。



「_____!」