私だって、茅野くんの事好きなんだもん。


目に力が入らなくて涙がこぼれ出す。
仕方ないって分かってても。
嫌われてるって知って平気な子なんていないよ。
叶わない恋をしてて辛くない子なんていないよ。


これ以上涙を流さないよう下唇を噛む。
むせそうになるのをこらえながら図書室へとゆっくり歩く。
噛み過ぎが唇からは血が流れて、鉄の味が口の中に広がる。
ぎゅっと握った手にはつめが喰いこんでいて痛い。
でも、これぐらいしないと大声で泣いてしまいそうだった。


乱暴に涙を拭って図書室のドアを開ける。


「ぁ……。」


2回、私の方が先だったから。
今回も私の方が先だと思ってた。


「……藤村?」


茅野くん、先来てたんだ。
今、顔いちばん見たくなかったかも。


泣いた顔を見られたくなくて下を向く。
バレてないかな。
結構距離あるし、大丈夫だよね。
どくんどくん、心臓が音を立てる。


内履きと床のこすれる音が聞こえる。
こっちに、向かってる。


下を向いたせいか、目から涙がこぼれ出す。
ぽたぽた地面を濡らしていく。
にじんだ視界の先、私じゃない内履きが目の端に映った。