好きな人にこんな可愛くない顔さらしたくない。
それに、目を合わせるなんて。
緊張してできっこないよ……。


「か、茅野くんっ、は、はずかし……。」


顔の近さに今気付いたのか。
茅野くんはごめんと小さく呟いて手を離してくれた。


し、心臓破裂するかと思った……。
まだばくばくしてる。
絶対聞こえてた。引かれたかな……。


「と、とりあえず、話す時くらい目見ろ。」


「む、むりです。」


「なんでだよ。」


緊張するからだよ!
茅野くんがかっこいいからだよ!
もう、この距離でも緊張するのに。


「じゃあ練習。」


「えっ。」


「目、見て話す練習。
 俺は藤村と目を見て話したい。」


ちらり、茅野くんの方を見れば。
ガラス玉のように透き通った瞳を。
逸らすことなく私の方に向けていた。


こんな真っ直ぐできらきらな瞳。
見つめ返すことなんてできっこない。