「ぜ、全然。」


「次からは来るなって言っとくから。」


「う、うん。」


茅野くんと、話してる。
それだけで心臓が痛いくらいドキドキしてる。
この音、聞こえちゃいそう……。


「藤村、何読んでんの?」


会話を弾ませようとしてくれている茅野くんとは裏腹に。
話をしている事実にすら緊張してしまう私は。
声が震えて、上手く話せない。


「み、ミステリー……。」


「へえ、面白い?」


「う、ん。」


ぜ、全然会話が弾まない。
どうしよう……。
せっかく茅野くんと話すチャンスなのに。
こんなこともう一生ないかもしれないのに。
ここじゃなきゃ話せないのに、もうどうして私って肝心な時にダメダメなんだろ。
私のばかぁ。


「藤村さ。」


「は、はい……うわぁ!?」


どもりながらも返事をした時。
ぐいっと顔を横に向かせられた。