顔赤くなってる。
あの笑顔間近で見たらそうなるよね。


下級生の子は頬を赤く染めていて。
ぽーっと茅野くんを見つめていた。


本を受け取る時、指がそっと重なってぴくっとしてる。
かわいいなあ、絶対恋に落ちたよね今。
茅野くん天然女キラーなのかも。


私はその一連を傍観していた。
まるで映画のワンシーンを見るように。
ただ、見つめていた。


いつの間にか茅野くんは貸し出し口に戻ってきていて。
隣に座っていた。


ああいうの、さらっとできちゃうんだもんね。
人気者だからなのかな。
私、友達にあんなきつくもの言えないや。
嫌われるかもって心配になっちゃうし。


茅野くんはそんなことで嫌われないって自信があるのかも。
すごいことだよね。
信頼できる友達ってことなのかな。
やっぱり、茅野くんは特別だ。


「藤村。」


「は、はい!」


本に視線を向けつつ、頭の中は茅野くんでいっぱいだったから。
茅野くんに名前を呼ばれてびっくりしてしまう。


「さっきはごめんな、あいつらが。迷惑かけて。」