茅野くんの怒りを含んだ声色が響き渡る。
その瞬間辺りはしーんとして。
周りの人たちは居所の悪い顔をした。


「お、おいそんな怒らなくったっていいだろ……。」


「ここ図書室って分かってる?私語禁止。
 お前らのせいで本借りれないやつがいるんだよ。」


茅野くんの視線は。
貸し出し用の冊子の方を向いている。
その視線をたどった手を乗せている子は、バッと手を退かした。


「そもそも今部活の時間だろ?
 サボってるの、バレてもいいのかよ。」


確かに今、部活の時間だ。
先週、茅野くんがジャージを着ていた事を思い出す。


私のクラス、部活してる人がほとんどだし。
ここにいる人たちみんな何かしらの部活に所属していた事を思い出す。


「やべ、部活忘れてた。」


「先生に怒られる……!」


茅野くんの一言で周りの子たちは図書室を足早に去っていった。
騒がしかった図書室は一変、静けさを取り戻していた。


茅野くんは席を立ち、貸し出し口から出ていく。
そしてそのまま、さっき本を借りそびれていた下級生のもとへと足を進めた。


「本、借りるだろ?手続きやるから。」


あの太陽のような笑顔でそう言って。
その子から本受け取った茅野くんはテキパキ作業を進めた。