いつも私より遅く帰宅する蓮さんは、今日は一段と遅かった。


「…そういえばケーキ屋さんに行ってくれるくんだっけ」


私は蓮さんの帰りを心待ちにしながら、夕飯の準備に勤しんだ。





「ただいまー」

「あ、蓮さんおかえりなさい!」


そして恒例のハグをする。

しかし小春は、蓮のいつも以上に力強いハグに不安を覚えていた。




「ごはん先にしますか?それともお風呂に入りますか?」


自分の思い過ごしであると思いたくて、精一杯いつも通り振る舞う。




しかしーーー

蓮の口からは、小春の期待した言葉は返ってこなかった。



「小春…話があるんだけど、聞いてくれるか?」


蓮の険しい表情は、これから話す内容を物語っているかのようだった。




「…は、なし……ですか」

「ああ、聞いてほしい」



「………聞きたくない」

「小春」

「やだ」

「小春!!」




ああ…ついにこの時が来てしまったのかと小春は血の気が引くのを感じた。