「蓮さん、声が聞こえたけど何かあったんですか?」


玄関から歩いてくる蓮さんを見ると、蓮さんの顔は険しく歪められていた。



「…蓮さん?」

「なんでもない」


なんでもないって顔はしていない。
だけど、これ以上聞いてしまったら困らせるような気がして、私は聞くのをやめた。





『ピンポーン』

気まずくなった空気を破るようにインターホンが鳴る。
さっき買った物が届いたのだろう。



「俺が行ってくるから小春は座ってろ」

「え、そんなの悪いです!」


「大丈夫。力仕事は男に任せとけ」


「…ありがとうございます」




蓮さんのことが好き。
大好き。
蓮さんに会えて、今すっごく幸せ。



「小春ー、ごめん。
これ置きたいから机寄せてくれる?」

「はーい」


殺風景な部屋にいろんなものが運び込まれてくる。



「蓮さん、これどこに置いたらいいと思いますか?」

「んー、その棚の横にでも置くか」

「そうですね」



まるで同棲をはじめるカップルのような会話に、小春の胸は踊った。