小春が着替えるのを待ってから、俺はこれまでのことを話すことにした。



「まず始めに…俺の自己紹介をしておくと、俺は蓮」


「蓮、さん。あの…苗字は?」


「苗字は…東堂。
でもこの苗字は嫌いだからあんまり知ってほしくなくて。
俺、養子なんだけど、施設にいた俺をあいつらは犯罪を手伝わさせるために引き取ったんだ。

だからあんなやつら親だとは思っていないし、名字もあいつらと同じものを名乗りたくない。

かと言って、小さい頃に施設に捨てられていたから元々の名字がわからないし」


「そう、なんですね」


少し困った顔をする小春がかわいいなと、柄にもないことを思ったが、俺はこれからもっと困らせることを言う。

かわいいなんて呑気なことを考えている場合じゃない、と自分に喝を入れた。



「あんたは俺のことを恩人だと言ったが…
俺は君のことを売り飛ばそうとしている悪いやつだ。
2ヶ月前からカメラ越しに君のことを監視していた」

「…へ?」



あまりに突拍子もない話に、彼女は本当に驚いているようだった。



「俺は犯罪者だ。
君のスマホや、そのカバンに付けられた小型カメラを通して、生活を監視している。
そして手に入れた映像を、VIPと呼ばれる金持ちのジジイたちに渡すんだ」


小春の顔に不安と恐怖の色が浮かぶ。