それでもあなたが大好きです。



「いいよ、怖がらないで思ったこと言ってみて?
ゆっくりでいいから」

車椅子に座る小春の高さに合わせて座り込むと、小春の俯いた目から今にも涙がこぼれ落ちそうなのが見えた。


「大丈夫だよ小春。俺は何があっても一緒だから」


「…あ、あのね、私些細な約束でさえもう守れないのが苦しいの。蓮さんの好きなもの作って待ってるって言ったのに…こんなんじゃ料理も作れない。
簡単な約束だったのに…
そんなことさえしてあげられない。

働くのだって、私は今まで通りできないから蓮さん1人に背負わせちゃう。


こんな私と一緒にいる意味あるのかなって考えちゃうの。時間が経って冷静になったとき、蓮さんをきっと後悔させる」


ついにこぼれ落ちた涙が俺の手の甲をつたった。




「…俺は家事が苦手だ。小春みたいに丁寧じゃないから部屋もそんなに綺麗じゃなかった。


他にもたくさん苦手なことがある。

子供とはどう接していいかわからない。
いつか俺たちの子供ができたとき、たくさん小春に負担をかけてしまうかもしれない。


ほら…変わらないんだよ。
足が動かせる俺だって苦手なことがたくさんあって、もちろん小春にだってあるだろ?

それを補い合って生きていくのが夫婦じゃないかな。


同じことが苦手だっていい。
そしたらそのときは2人で一人前になろう。

それに俺はたとえ罪を償ったとしても、俺がしてきたことは消えないし消したらいけない。
一生忘れたらいけないことだ。

俺と一緒にいることで小春には俺の罪を一緒に背負ってもらうことになる。
俺はそれが嫌だって前に言ったけど、小春はそれでもいいって言ってくれただろ?


小春がもし自分のことを荷物になるとしか思えないんだったら、俺だって小春の荷物だ。