永遠の命
目覚めた時には知らない場所にいた
「目覚めたかい?」と優しい声が聞こえる
私は寝ぼけていて無言で頷いた
「昨晩は済まない。君を巻き込んでしまって…」
そうだ、私あのあと!と思った時
「怪我はないかい?」と訪ねてきた
「大丈夫です」と静かに答えた
「そうか、それはよかった」
「あ、あの…ここはどこですか?」
「まだ言ってなかったね。ここは妖の世界だよ」
私は目を丸くした
これは夢なのかもしれないと思い私は思いっきり頬を引っ張った
「なにをしてるの?」と少し笑いながら訪ねてきた
あ、笑ってる
その笑顔がとても愛おしく見えた
「えっと、夢なんじゃないのかなって思って…」
「僕にとっては夢のまた夢だよ」と小さく呟いていた
その瞳はどこか寂しそう
「え?」
「ごめんごめん独り言」
と慌てて言ってきた
夢のまた夢?どういう事だろう
そう考えてるうちに
「そう言えば自己紹介まだだったね僕の名前は白助。狐の妖さ」
私も続けて紹介しようとしたら
「君は一ノ瀬真央」と嬉しそうに言ってきた
なぜ私の名前を知っているの?!
驚いていると白助が
「浴衣汚れてしまったね。新しい浴衣を貸してあげるよ」
浴衣?あっ!!!!!私未歩と縁日に来てたんだ!
「ちょっとまって!私友達と縁日に来てたの友達が待ってるから元の世界に返して」少し声を荒らげてしまった
「心配しないで、人間界の時間は止まっているよ。戻る時にはちゃんと未歩ちゃんが待ってる」と浴衣を探しながら答えてきた
その答えに私は不安になり泣いてしまった
早く未歩に会いたいお母さんとお父さんに会いたいよ
すると白助が服を探すのをやめてこちらに近ずき何も言わず優しく私を抱きしめてくれた
私は居心地が良かったせいか白助に泣きついてしまった
それでもなにも言わずにただただ抱きしめ続けてくれた
私が泣き止んだ時少し大きな手が私の頭へ伸びてきて優しく頭を撫でてくれた
「僕はまた君を泣かしてしまった」
と彼は悲しそうに呟いた
私はその言葉に理解が出来なかった
会った事あったかなと考えているうちに
「これ、新しい浴衣。僕は外にいるから着替え終わったら出てきて」
白助が渡してきた浴衣は紺色で向日葵柄が描かれてる綺麗な浴衣だった
「可愛い」と呟く
「真央に似合うと思ったんだ。じゃあ僕は外に行くね」と手を振り外へ出ていった
浴衣なんて着付けた事ないけどお母さんがやってくれたようにやればいけそう?と自分と葛藤しながら浴衣を着付けていった
「よし!できた!」
我ながらとても綺麗に着付けられた気がする
「お待たせ」と私が言うと
「あ、そのとても可愛いよ…」と白助が赤面になりながら言ってくれた
私もつられて赤面になりながら
「ありがとう」と返した
「じゃあ行こうか」
「え?どこに?」と私が尋ねる
「お腹すいてない?」彼が笑いながら言ってきた
そう言えばあれからなにも食べていない
「お腹すいてる」と私は答えた
「僕の行きつけのお店があるんだ!」
とても嬉しそうに言ってきた
「行きつけ?妖の世界にもお店あるの?」と歩きながら尋ねる
「妖の世界と人間界の違いはさほどない
だけどひとつだけあるんだ」
「ひとつだけ?」私は白助の顔をのぞき込んだ
「永遠の命」
「永遠の命?」私はそのまま聞き返してしまった
「そう、僕達妖には永遠の命がある。でもその永遠の命が僕にとってしまえば邪魔な存在」と真剣な顔で言ってきた
「永遠の命なんて羨ましいよ。ずっと生きられるってとても幸せな事じゃない」
「そんな事はないよ。ここにいる全ての妖は動物の妖ばかりなんだ。人間に化けて人間と関わり人間と恋をする。人間と恋をしたら永遠の命を取られ人間界に追放され醜い動物にされてしまう。でもみんながそうではないけどね」と話してくれた
「私は例えそれが悪い事だと知っていても誰に恋をしたっていいと思う。追放されてしまった妖はどうなるの?」
「醜い姿を好きな人に見せるわけにはいかないだろ?だからそこで自殺する者が多い」と白助が答えた
私は悲しくなり無言でいた
「白助はなんで人間界で人間の姿にはならないの?」私は話を変えた
「それは内緒」白助は唇に人差し指をおきながらからかったように答えた
「着いたよここが僕の行きつけのお店」
「お餅屋さん?」と尋ねる
「その通りお餅だよ!きな粉餅がとても美味しいだ」すると中から声が聞けえてきた
「いらっしゃい。また来てくれたのかい?」と優しい笑顔のおばあさんが言ってきた妖だと思うけど
「もちろんだよおばさんのきな粉餅は妖界1美味しんだから!」と白助が元気よく答えた
「ありがとう白助。今日は可愛いお連れ様がいるみたいだね」
お連れ様、私のことだろうか
「そうなんだ、この子にもおばさんのお餅食べさせて上げたくてさ」
「そうかいそうかいちょっと待っておくれよ、可愛いお連れ様もお座り下さい」
「ありがとうございます」
私たちは椅子に座り待っていた
「お待たせしましたきな粉餅だよ」とおばあさんがお餅を運んできてくれた
「美味しそう!」と私が声にだすと
「とても美味しいから早く食べてみて」
私はお餅を1口食べた
「美味しい!すごく美味しいよ!」
興奮しながら白助に言った
「そうでしょ?」と笑顔で白助が答えた
私はお餅をほう張った
「ごちそうさまでした!」私たちは声を揃えておばあさんに言った
「また来てね」とおばあさんは笑顔で見おくってくれた
私たちはお店をあとにした
「もうひとつ行きたい場所があるんだ」
と白助が言う
「どこ?」
「ここのお店」と白助がにっと笑いながら答えた
お店にはとても綺麗な簪やくしが売られていた
「とても綺麗」と私は思わず声に出した
「ひとつ真央に買ってあげるよ」
「え、でも悪いよ」私は遠慮をしたが
「いいから、この簪いいんじゃない?」と白助が言ってきた
その簪は赤い宝石が綺麗に散りばめられた素敵な簪だった
「とても素敵な簪」と私は言う
この宝石白助の瞳みたいに綺麗
「じゃあこれにしよう。これ下さい」
「毎度あり」と店主が言う
「ありがとう白助。ほんとに素敵な簪だね」私は心から思った
「僕が付けて上げるよ」と私の手から簪を取り髪に付けてくれた
「うん、可愛いよ」
白助は無神経に言ったのだろうが私は心が跳ねた
そのまま私たちは白助の家へと戻った