「…ちょっと私もおしゃべりがすぎたわね。クウェンナ、貴方もそこらへんでよしなさい。」

「…はい、ダーチェス様」


主人を見上げるクウェンナの目が、先程の優しいものから恍惚としたものに変わった。


それを見ながらダーチェスは紅い唇を開き、アレンに話しかける。


「貴方の仲間に手出しをしないっていうの、承諾してあげる。条件があるけど、ね」

「…条件?」


サッとバレないように剣に手を添え、アレンはおうむ返しに聞き返した。

美しい女性は艶やかな笑みを浮かべながらアレンに視線を移す。




「そう。条件。

…私達と一緒に神の塔へ来なさい。」




そう言ってにこっと笑ってみせると──アレンに向かって手を差し出した。



それを取ってこっちへ来い、とでも言うように。



その様子をクウェンナがジッと見ている。





「……神の…塔…」


それを聞いた瞬間相手の目的がわかったアレンは、無意識に首筋に手を宛てた。


今中途半端に解放している魔力を普段封印している、魔方陣のような小さな刻印がそこにある。



ダーチェスはアレンが封印の印に手を宛てたのを見て、満足そうに頷いた。