「……………あら?」


アイスティーと一緒に戻ってきたレイは、小首を傾げてキョロキョロ辺りを見渡した。



「アレン?どこ?」



そう、ここにいた筈のアレンがいない。


試しにバルコニーの中を覗いてもその姿は見当たらなかった。



「変ね…。扉が開いてるから外で待ってるのかと思ったのに。」



(まさか自分でお酒をとりに行ったのかしら)


そう考えたレイだが、大広間にもアレンはいなかった。



とりあえずここにいたら来るかななどと予測しバルコニーで待つ。


柵に器用にアイスティー二つをのせ、眺めていたところでふとあることに気付いた。




「………?」




柵の上に擦れたような跡がある。


たぶんこれは靴か何か。



「……えっ、誰か自殺したの!?」


慌てて下を見下ろしたが、誰も倒れてはいなかった。



ホッと安心しながらも、別の言い様のない不安が押し寄せてくる。




「…………アレン…?」




ポツリ、とその名を呟き。



嫌な予感に身を震わせ、レイはもう一度大広間に目を向けた。




開けっ放しの扉から風が入り、白いカーテンをはためかせている。





まるでこれから起こることの激しさを表すかのように、

パタパタと大きく揺れて───……