閉めていたガラスの扉をまた開く。


バルコニーに出ようとしたが、そこで一度振り返った。




「………ごめん、レイ」




呟いた本人にしか聞こえないような小さな囁き。



それは愛しい人に対する謝罪の言葉。





少しもの惜しげにパーティー会場となっている大広間を見渡してから、アレンはバルコニーに足を進めた。




軽くジャンプして柵の上に立ち、下を見下ろす。




「……何のつもりか知らねぇけど…、出てきたからには行かせてもらうぞ」



そう無表情に呟くと、またジャンプして三階であるバルコニーから地面に軽々と降り立った。


そのまま一方向を睨み、ゆっくり歩みを進めていく。



やがてそのアレンの姿は、暗い闇の中に消えていってしまった。







────北の、方向に。