「あ、アレン…」

「っるせぇんだよお前ら…。他国に来てまで騒ぎ立てるな」


さっきまで馬車の中で寝ていたからか至極機嫌の悪いアレンは、遠慮なく毒を吐くと特に煩かったイルにデコピンを食らわせた。


「いったあぁあ~い!!」


当然、おでこを押さえまた騒ぐイル。

しかしアレンは使用人にさっさと挨拶を済ませると、案内を始めたニーナに続きもう歩み去っていた。


拗ねて唇を尖らせるイルがいくらか大人しくなったのを確認し、ギルクはホッと胸を撫で下ろす。


そして前方にいるアレンといつのまにかその隣を歩いているレイを見ると、深い溜め息をついた。



「…おいマケドニス、どんな起こし方したんだよ?」


遅れて馬車から出てきた親友の側近に訊ねる。


マケドニスは数時間前の船酔いがまだ残っているのか、青い顔をギルクに向けると首を横に振った。



「…俺じゃありません。クナルが起こしました…」


「ふふ、凄いでしょう」



また馬車から出てきたのはクナル=リゼリアン。


彼女はニコニコ笑ってそう言ってのけた。