寝るのをやめたのか瞼を上げたアレンは、表情を歪めているレイを見て怪訝そうに眉を寄せた。



泣きそうな彼女にそんな対応をすることは滅多にない。


めちゃくちゃ不機嫌だ。




「……どうしたレイ」



低い声が耳に伝わり、レイは床に向けていた視線をベッドの上の彼に移した。



しかめっ面で、至極機嫌が悪そうだ。




ただ、開かれた瞳は。





────変わらず、優しかった。







「…………アレン…」


「………ん?」






ちょっと微笑んだレイを見て、アレンの声色も少し和らぐ。



レイはアレンの手を握ると、






「…………笑って?」







そう言って、真っ直ぐアレンの顔を見つめた。









「………………え?」



ぱちぱち瞬きしながら、聞き返すアレン。



「…貴方の笑った顔が見たいの。もう辛そうなアレンは嫌なの…。」



囁くように、呟くように。


言葉を紡ぎながら、レイはアレンの碧の瞳を覗き込む。






「…………………。」


急なお願いにアレンは驚いたようで、目を見開いたまましばらく黙り込んでいた。