アレンが作るこの表情の主な原因であろうそれ。

アレンが大人──特にカルアシティの、を嫌いな原因でもあろうそれ。



(…泣いちゃ、駄目)



レイは泣き出しそうになるのを懸命に堪えた。


何とかやり過ごしてから、またアレンに目を戻す。




彼は恐いほど綺麗な無表情のまま目を閉じていた。


寝ようとしているらしい。





「…あの、アレン」


レイが遠慮がちに声をかけると。



「…シルラとルシアンは?」




目は瞑ったまま、静かにアレンが訊いた。



レイは眉を下げてまた泣きそうになると、答えを言うべく薄紅色の唇を開く。





「…二人とも亡くなったわ」


「………そっか」





返って来たのは、そんな素っ気ない返事。




これが普通。


少なくとも、他の人には。




でもレイは違う。





いつもあの優しい瞳を向けられていたいたからか、とてつもない違和感と切なさに襲われる。