「………アレン?」




真っ赤になって彼を見ていたレイは、ふと眉を潜めた。



一瞬、ほんの一瞬だが。






アレンが哀しそうな、泣きそうな表情を整った顔に覗かせたのだ。









「どうしたの?」



この間は精神が弱っていたからまだわかるが、普段滅多にそんなことはない。



心配に思いレイが訊けば、目の前の碧眼は彼女から目を逸らし、女性に大人気を誇る顔はたちまち無表情になる。





───レイは久しぶりに、アレンの無表情を見た。





感情を圧し殺したような、そんな顔。







「…………………。」





それを見て。



レイはまたさっきのマケドニスの話を思い出した。





マケドニスにアレンには黙っておくと約束して、話してもらったあの話。



母を失い、ずたぼろの心のアレンに更に追い討ちをかけた過去。


マケドニスは詳しくは話してくれなかったが、あなた達は知っておいた方がよいと言えるところまでは教えてくれた。




そしてその内容が、あまりにも悲しすぎて。


哀しすぎて、だから既に泣き腫らしたくせにまた泣きまくったのだ。