「…アレン君が心配なのはわかるけど、貴女ちゃんとベッドで寝てなきゃ。

傷は治ってもまだ痛いでしょう?貧血だってまだ…」


「大丈夫です。アレンに比べたら…。」



涙声で言うレイに、クナルは眉を八の字に下げた。


この美少女は、ずっとこんな様子なのだ。




────彼女の恋人が、死にかけてから。






「アレンはどうですか?」


また潤んだ瞳でクナルに訊いたレイは、心配そうにカーテンで遮られたガラスの窓を見る。


その向こうに、アレンがいるのだ。



あれから一度も目を覚ましていない、愛する人が。






「…まだ何とも言えないわ。目を覚ますまで安心出来ないの。
今なら落ち着いてるから、ちょっとだけなら会えるわよ」


「…会いたい。会わせてください」



色んな想いが詰まったその囁きにクナルは無言で頷くと、レイを従えまた治療室に入った。


重い扉が開かれ、中に入ると数人の医師が待機している。



レイを見るとペコリと礼をし、察してくれたのか部屋から去っていった。