「……まいったな」
ダルヌク国の首相ブエノル邸の外で、クウェンナはぼそりと呟いた。
後ろの豪華な邸宅は、静まり返っている。
「ブエノルを操ったのはいいけど…、アレンが死んでたらもう終わりだ」
自分の主人の計画が進行出来なくなる。
クウェンナはしかめっ面して天を仰いだ。
空に輝いている筈の月は、厚ぼったい雲で隠されていた。
「…自滅すんなよなアレン。お前は後でちゃんと俺が殺すんだからさ」
死んでたらしばくぞ、と何だか釣り合わない言葉を吐く。
直後、暗い夜の国から、一人の男が消えたのだった。
闇の動きが、
確実になる───────


