(まさかそんな筈…)



半信半疑で名前を呼んでみたが、男の子は反応しない。




それはそうだろう、彼はもう17歳。


この小さな男の子はせいぜい7歳か8歳といったところだ。




そう、マケドニスが納得いくようでいかないような妙な気分になっていると。






『アレン、6時には帰って来なさいよ』




戸口に立つ茶色い長い髪の美しい女性が、子供に向かってそう言った。




『うん!いってきます、お母さん!』



満面の笑顔でそう返す少年、“アレン”をマケドニスは信じられない気持ちで見つめる。




─────確かに。





今、アレンと呼んだ。












少年は体の向きを変え、海の方へと駆け出していく。




するとマケドニスの目に映る景色も、彼が動いた訳でもないのにそれについて行った。




「…嘘だろ」




固まったままだったマケドニスは慌てて後ろを振り返る。



少年の母親の瞳は、自分の主人と同じ澄んだ碧色だった。