主人であるアレンのもとに行こうとした側近だったが、それはままならなかった。



「…っえ!?」



マケドニスが近寄ろうとした瞬間、地面──ではなく魔方陣から、大きな氷柱が生えだしたのだ。



来るもの全てを拒むかのように、何かが近付いた途端にそれは生まれる。



「アレン様!」



アレンは叫ぶマケドニスにさえも反応を示さず、ブエノルに近付いていた。



ついに腰を抜かして座り込んでいる男の手前まで来る。



彼を見下ろすアレンの目は、今まで誰も見たことがないくらい冷たく恐ろしかった。




「…す、すまなかった。だから、やめてくれ…」



アレンに思い切り見下ろされたブエノルは命乞いを始めた。


最早プライドも何も関係ない。



しかしアレンはそれを聞こうとはしなかった。





怪我をして痛い筈の片足をあげ、ブエノルの腹を蹴る。


その強さに初老の男は声も出せずに背中を丸めて踞った。



その丸見えの背中を力一杯踏みつけ、アレンは怒りのままに魔法を連発させる。