「…お目覚めかい?」



軽いへらついた男の声で、レイの夢は途切れた。


レイはぱちぱち瞬きして、目の前の自分を覗き込む男の顔を直視する。



そして。



「……きゃああぁあぁあぁ!?」



あと数ミリでくっつくぐらい近くにあった男の顔を、思い切りぶん殴った。




───ぶん殴った、筈だった。




しかし、腕が動かない。




「……え?…あ!」




自分が拘束された状態なのを見ると、レイはようやくさっきのことを思い出した。


この目の前にいるへらついたムカつく男に、気絶させられたのだ。



「…ちょっと、何よこれ…!離して!あんた誰よっ!」


レイは柱にくくりつけられた状態から抜け出そうと、暴れながら男を睨んだ。

男は相変わらずへらへらして、ムカつくことこの上ない。



「俺?俺はクウェンナってんだ。まぁ、覚えといて。あ、それ暴れても無駄だから。魔法もかかってるしね」


男、クウェンナはそう言うと、レイをジロジロ観察しだした。