「キスもしたって言ってたの!あのアレン様とよ!?きゃああ!!」
使用人二人はきゃあきゃあ騒いで真っ赤になる。
何想像してんのよ!
…と、怒鳴り付けたいところだが、それどころではなかった。
アレンとシルラができてて、しかもキスまでした?
あり得ない。
あのアレンに限ってそんなことがある訳がない。
そんな訳ないのだ。
ない、けど……。
(やっぱり、私の知らないところでアピールしてたのね…。)
本人、というのは話からしてシルラだろう。
あの真面目で使用人皆に慕われているシルラが嘘をつくのかと言われれば、反論しようがない。
(で、でも、アレンはそんなことしない筈…。)
そんな噂信じたくもない。
…アレンを信じなきゃ。
いつのまにか使用人二人がいなくなったのにも気付かずに、レイは壁から離れて歩き出した。
信じる、とは決めたけど。
その噂は確実にレイの心に不安を植え付けてしまった。


