「ドジったから。それだけ。俺まだまだ執務が残ってるんだ。悪いけどもう出てって。」

「言うまで行きません。」

「…この城の主は俺だ。」


アレンの低い声にクナルは喉まで出かかっていた言葉を呑み込む。


今まで一度も上下関係などに囚われず、自身がそれを拒んでいたアレンが言ったそれに驚いたのだ。



「…もう戻っていい。薬と治療ありがとう。レイとかマケドニスとかに言うなよ。」


それだけ言ったアレンは座っていた椅子に凭れると机の上に置いてある大量の資料に取りかかった。

クナルはもう問い詰めても無駄だと悟り、溜め息をついて部屋を出る。



「…ふぅ」

クナルが出てしばらくして、アレンは小さく息を吐いた。


さっき机の引き出しにしまいこんだ物を取りだし、じっくり見る。



アレンの手の中にあるのはカードのように薄っぺらい真っ二つに切られた刃物だった。