【短編】あなたとの距離、近くて遠い


こんな、私好きになるはずがない。

久保田さんは、短髪で少しクセ毛があるけど、大きい黒目で誰かの心を見透かしているような目をしている。

その眼差しは、私は好きだ。また、一般的にいる男性よりは、顔は整えられている。

そう、私とはまるで違うのだ。根本的に。
 考え込んでいたら、誰かの声がした。

「……花野さん、花野さん」

 目の前には久保田さんがいた。

久保田さんの両手が私の両肩にあった。

私の身体を揺さぶって、私の反応をないことに心配しているようだった。

真剣に私を見据えていた。いつもの大きい目元がより大きくなっていた。

「…あ、なんでもないです。すいません。ご迷惑をお掛けして。戻ります」