【短編】あなたとの距離、近くて遠い


「あ、久保田さんっていう人だったような」

 私はすぐに車いすに乗り、久保田さんに会おうと急いでナースステーションに行こうとした。

すると、母さんは、なにしてんの?
と心配そうに私に尋ねてきた。

「…ゴメン、ちょっと行ってくる」

 私は何も言わずに車いすを使って、ナースステーションに行こうとした。
 
すると、私の食事を持ってきてくれた准看護師の方が私に気づいて声を掛けてきた。

「……花野さん。どこ行くの。まだ、昼も食べていないのに」

「…ちょっと」

 私は一言だけ言い放ち、また車いすを両手で動かした。

 まだ、准看護師の方が私の後ろに付いて、どこ行くの? どこ行くか教えてもらえたら手伝うよ と言って私に話しかけてきた。

 無視して車いすを動かしていると、聞いた声が私の目の前にいた。