【短編】あなたとの距離、近くて遠い


その時、目の前に誰かがいた。

「あら? 起きた?」

 うん? と目を擦りながら、目の前にいる人を見ると母さんだった。

「え? 早くない。午後に来るって言ってたのに」

そう言うと、母さんは言った。

「今、十三時だけど」

「え? え? どういうこと」 

 私を驚いて、母さんの目を見た。

「あんた寝ちゃって、お昼はあとにしてもらったのよ」

 私寝ちゃったの。
確か、私はテレビを見ていたはず。どうやって横に。そう思ったら、母さんが声を発した。

「あ、あの看護師さんには礼言っておきなさいよ」

 母さんは私の必要なモノを引き出しに閉まっていた。

「……それって、誰?」

 目を丸くして、母さんを見た。

それに気づいたのか母さんは私の方を向いて、返事をした。