【短編】あなたとの距離、近くて遠い


「そうですか。それなら、良かったです。では」

 久保田さんは片づけを終えて、ペコッと頭を下げて、出ていった。

 ため息をつきながら、私は今の時刻を確認した。7時五十分。

八時から朝食だから。あともうちょっとで、准看護師の方が持ってくるはず。

 やっぱり、これは陽性転移なのかな。

優しくされたからって、好きになったわけじゃない。

私が疲れているかもしれないし、気のせい、気のせい。

 そう心の中で自分に言い聞かせていたら、准看護師の方が食事を持ってきてくれた。
 ご飯を食べて、テレビを見ていた時、担当医の木本先生が来た。

 木本先生は、外科の先生で唯一の女の先生だ。前、他の看護師さんが私に言ってたな。木本先生の後ろには、研修生の男性二名がいた。