今ではモリスだけでなく俺や一口(いもあらい)も車の運転を覚え、ピックアップトラックの後ろにコンテナをつなげて移動している。

 一口は教習所に通っていた途中だったから、俺よりも早くに運転を覚えた。

 頑丈な車を選んで、路上にいるゾンビには勢いをつけて轢いてまわった。

 寄生虫に脳を食われてはいても、見た目は人間だ。

 なのに、俺たちは何も感じなくなっていた。少しずつ、俺たちは何かに麻痺していたのかもしれない。

 それでも、生き残りを探す旅を止めようとは思わなかったし、立売堀(いたちぼり)早苗のおかげで人間性を失うことがなかった。

 彼女だけは、どうしてもゾンビ(虫)を殺すことが出来なかったのだ。

 それが、俺たちの唯一の光になったんだろう。

 本屋で野草の本を探し、山を通るときは山菜を採った。