──走っている間もたくさんのゾンビとすれ違う。気のせいだろうか、昨夜に見たゾンビたちよりも動きがおっとりしているようにも感じられた。

 この世界は本当にゾンビに支配されたのだろうか。

 ゾンビというか、虫だけど。そんな思考が過ぎるなか、発電所の入り口に到着する。

 いるはずの門番はいるはずもなく。

 車はそのまま敷地内に入っていく。天然ガスや石油が詰まったタンクが並ぶ光景は壮観だ。

「人はいないようだけど、動いてるよね」

「そうだね」

 確かに、動いている気配がある。そうすると、送電線辺りに何かあるのかな。

「ていうか。何あれ」

 うろうろしていると、でかいドラム缶のようなものが数本、横倒しになったようなものが視界に入る。

「あれはボイラーだ」

 モリスの説明に、これがボイラーかと眺めた。しかし、一口はボイラー自体に「何あれ」と言った訳じゃない。

「どこかから熱が漏れているのかもしれない」

 そう、ゾンビが集まっているのだ。まるで寒さをしのぐ冬の虫のように、固まって動かない。

「春と言ってもまだ寒いもんね」

「虫は虫ってことか」

 その異様な様子に、俺たちは呆然と立ち尽くしていた。