「あいつら、明かりとかにも寄ってくる?」

「解らない」

「虫なら、光には敏感かもしれない」

 一口(いもあらい)の質問にモリスは首を振り、俺はそう答えた。

 俺たちは部屋の照明を暗めに設定して四人固まって息を潜めている。

 体育館から逃げて、立売堀(いたちぼり)は恐怖でまだ震えが治まらない。

「なんで? なんで?」

 同じ言葉を何度も繰り返している。それを一口はずっと見ていたがふと、

「ホントに。なんで突然?」

 その問いかけに、俺はあの光景を思い起こす。

「逃げているときに見たんだ」

 地面を這っている小さな虫を──

「え、でも。あいつらって、脳から出たらすぐに死ぬんじゃないの?」

「でも見たんだ。無数の虫を」

「──雨?」

 モリスのつぶやきに俺と一口はハッとした。