「あそこ!」

 一口は一件の家を指差した。玄関が開いている。

「中にゾンビがいたら!?」

「ぶちのめす!」

 俺の問いにモリスが即行で答え、いち目散に駆け出した。

 もちろん、俺たち三人は怖々と玄関をくぐる。

 その間にも、モリスが家の中をくまなく調べてゾンビがいたらぶちのめす音が響く。

「クロド。こっちだ」

 呼ぶ方に向かう。そこはなんの部屋だろうか、窓がない。

 なるほど、入り口は一つだから安心かもしれない。と思ったら別の部屋に案内した。

「あの部屋じゃないのか」

「大勢きたら逃げられなくなる」

 じゃあなんであそこにまず誘導したんだよ。

「何かあったらあそこに逃げ込むか、家から出るかだ」

 ああ、そういうことねと納得した。

 どうにか逃げられたと安心し、一口(いもあらい)とモリスの手にバックパックが握られていることに気がつく。

「おまえら──」

「え、だって緊急ってこういうときでしょ」

 こいつら、ちゃっかりしてやがる。