高校生になってからの日課は、朝練をしている人たちを眺めること。


そんなくだらないことは、帰宅部なわたしたちの特権。






「ねえ凛!!あの人かっこよくない?15番の人!」


「うーん75点かなあ。」


「びっみょー。なんで?」


「だって寝癖がはねてる。手入れがなってない。しっかーく。」


「凛ってば厳しいな!」






メンバーは、親友同士の咲と菜美と詩奈。


4人の共通なことが、大のイケメン好きってこと。







「りーん。この中で一番モテるじゃん!かっこいい子紹介して!!」


「えー、急にそんなこと言われても……。」






突然の無茶振りに頬をかく。


ていうか、モテないし。
勝手な勘違いご苦労様です。






「凛いないのー?」


「いやいや。かっこいい子は、わたしたちに興味ないから。」


「そういえば現実って厳しかったもんね。」






わたしたちの間に沈黙が続いた。
頭の中で、葬式の時に聞こえる、チーンという音が、鳴り響いていた。


あーイケメン降ってこないかなー。



なんて現実逃避を始めたときに、脳内から聞き覚えのある声が流れてきた。






『凛。いつか必ず、迎えに行くよ。』






あ、わたしはいままで、大切な人のことを忘れていた。


落ち込んでいる空気の中、机の上にある携帯に目がいった。
その携帯には、可愛いクマのキーホルダー。






「……………理央が、いた。」


「え?」






ぽつりと呟いたわたしの声に、さっきまでの葬式モードから、過剰な反応を見せる3人。


ちょーっと待ってね。
携帯のカメラ機能で、ある写真を探した。
結構前に撮ったもんなぁ。見つかるかあ?

心配しながら、かなり前の日にちに遡ったら、目当ての写真を見つけた。






「あった………。ほらっ、みてみて!」







わたしが見せたかったのは、ピースしているわたしと一緒に写っている子。

もちろんその子は男の子で、その彼は照れ臭そうに微笑みながら、こちらを見ていた。

それはそれは綺麗な笑みだった。







「結構かっこよくない?」






にいっ、とわたしが笑うと会場は大盛り上がりだ。


いろいろとみんなの感想を聞いていると、菜美が鼻を押さえていた。


ど、どうかした!?
わたしたちが菜美に駆け寄ると、奈美は弱々しくわたしの二の腕を掴んだ。






「隊長……鼻血が…止まりません……!!なんて素敵な笑顔………。天使が…ここに…生きてて、良かった!!!」






それを聞いて、わたしたちは悟りを開く。


男の子を見てリアルに鼻血出す奴がいたんですね。勉強になりました。