「ははっ、本当にすぐ照れるんだな。」


あまりにも単純で、だけど愛おしくて。
つい声に出して笑ってしまった。


そしたら急にちーちゃんが………


「………和くん……?」


と言い出したから俺自身、固まってしまった。


今の言い方的に俺が千紗、と呼んだから仕返しで呼んだ感じではない。


なんていうか……囁く程度の小さな声だった。


周りに人がいっぱいいたら聞こえないくらいの大きさ。


「………は?」


俺は間が空いた後に声を発するとちーちゃんははっとしたような顔をした。


「ご、ごめん……!
違うから今のは違うから!


橋本くんのことじゃなくて………えぇと……小学校に同じクラスだった子で………」


そしてテンパっている。


「わ、私の初恋の人のことだから……!!
……って、何言ってるの私!


もう本当に名前間違えただけだから!ごめん帰ります!」


最後は訳がわからないことを恥ずかしそうに言って足早に去っていったちーちゃん。


でも俺は後を追うような心境じゃなくて………


「なんだよそれ………」


たしかにちーちゃんは和くん、と俺の名前を呼んだ。


だけどちーちゃんは俺のことを気づいたわけではなさそうだった。


多分俺がちーちゃんの中の昔の俺と重なって見えたのだろう。