それは本当に一瞬だった。
倒れた男子はペンキが服にかかり悲鳴をあげていたけど、それ以上に私は驚いていた。
和くんがちーちゃん、と呼んだことに。
それは津原くんも同じで目を見開いて和くんを見ていた。
和くんはというと私の腕を掴んでいた手を離し、はっとしてしまった、というような表情をしていた。
「おいおい陽たちなんで俺の心配してくれねぇんだよ…………って、お前らどうした?」
起き上がった男子は明らかに3人の間に流れていた微妙な空気を読み取ったらしい。
やっと、聞けた。
久しぶりに聞いた、ちーちゃんと呼ぶ彼。
目の前の彼が確かに私をちーちゃんと呼んだんだ。
「やっと呼んでくれた。」
私は思わず声がでて、笑みがこぼれてしまった。



