「で、でも…別にどうにかなりたいとかそういうのじゃないんです」
「ふーん…じゃあもし明日付き合ってって言われたら、断るの?」
「いや、言われてしまったならそれとこれとは話が別で」
「あわよくばな願望ありまくりじゃない」

まぁ下心が完全にないかと言われると否定はできない。

でも、なんていうんだろう…
異性として好きとか嫌いとか、そういう感情っていうよりは…興味とか、憧れっていう表現の方がしっくりくる気がするのだ。

あぁ、あと…
「日々の癒し…的な?」
「は?」
「ほら、リサさんにもありませんか?日々の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれる…なんか栄養ドリンクみたいな!」
「私、イケメンを栄養ドリンクに例える女に初めて会ったわ」

我ながらぴったりの表現なんじゃないかと思ったのは自分だけだったようで、目の前のリサさんはあからさまに大きなため息をついた。

「そっ、そんな大袈裟に呆れなくてもいいじゃないですかー!」
「ごめんつい…でもそれが萌花の可愛いところだからいいとも思うのよ」

テーブルに肘ついて頭抱えながら言われてもあんまり説得力ないです、リサさん。

…でも彼への感情をうまく言葉にするには、まだ私は彼のことを知らなさすぎる。

「ご注文はお決まりですか?」

今彼の瞳に私が映る瞬間は、その言葉のあとの数秒だけなのだ。
だから憧れたりはする。いつかあの人の瞳に私が私として映る日がきたらいいなって。
きっと今は、ただの行きつけのカフェの店員でしかないだろうから。