……やばい、今かなり動揺してる。
…自分自身に落ち着けと言い聞かすのは、今日だけに絞ったとしても何回目なんだろうか。
「…えと、朱雀、くん?」
「…っ、あぁ…悪い」
楠木に呼ばれて我に返る。……助かった。
その時ふと目に入ったのは、つないだままの互いの手。
できることなら、このままつないでいたい。
小さくて柔らかい、触れれば折れてしまいそうな手を……まだ、つないでいたい。
「…朱雀くん」
不意に、楠木が声を上げた。
……教室で、俺に「ありがとう」と言った時と同じ…小さいのに、はっきりとした、声だ。
「嫌じゃ、ないよ」
その目は、まっすぐと俺を見つめている。
……それ、つないでいて良いってこと…だよな。
……ああ、だめだ。
顔がニヤける。
…まぁ、良いか。
楠木の、前なら…。
「…そう。なら良かった」
楠木に、触れていたい。
はにかんだ顔が見たい。
澄んだ小さな声を聞いていたい。
純粋なその目に……俺への熱が、帯びて欲しい。
ダメだ。
認めるしかない。
……俺は、楠木が…好きだ。
