……やべぇ、顔がニヤける。





楠木の小さな手を引きながら、俺はもう片方の手で口元を抑えた。


まさか、帰り道でも会えるとは。
…意外と近くに住んでるのかもな。






「あ、あの…朱雀、くん」





後ろから小さな声が聞こえた。
首だけ後ろに回して声のする方を見た。






「何?」




「手…」






楠木の視線は、繋がれている手に向けられていた。




「…嫌なら離すけど」




…ぶっきらぼうにしか言えない自分に少し腹が立った。



楠木は俯いて無言だ。
…正直楠木は、嫌かって言われて、嫌って言えるような性格には見えない。


てか嫌って言われたら少し凹む。





…なんか、軽く罪悪感。謝るべきか?









「…楠木?」






.




.




「ふぇっ」




.


………何だ、今の声は。





…今までに聞いたことの無い声に、思わず俺は固まってしまった。