一人悶々としながら、下駄箱へ向かう。

当然だが、もう誰もいないな。

……さっきからあの妄想が頭を離れないから、頭を冷やすにはちょうどいいかもしれない。







「…あ、の」






聞こえた小さな声に、振り返る。

まさか、いると思ってなかった。

……というか、声だけで分かるとか…本当に重症だ。





「…どうしたの、楠木」





なるべく、優しい声で。

…俺が、女子にこんな気遣いをするなんてな。





「え、えと…」



目の前の彼女は、視線をさまよわせている。

が、意を決したのか、俺を見上げた。




「…こ、怖くない、から」



「…え」



怖く、ない?

一体、何のことだ……?






「朱雀くん、のこと、怖くない、から」









ーーーそんなに、俺、怖い?




楠木のその言葉に、数時間前の会話を思い出した。

…確かに、そんなこと、言ったな。






…待った。






じゃあ、それ言うためにわざわざ、生徒会終わるまで待ってたのか。






「そ、そういうこと、だから、それじゃ…また、明日…えっ」





気が付いたら、彼女の制服の袖を掴んでいた。

彼女は驚いたようにこちらを見上げる。


止めたはいいが、何も言うことが思い浮かばない。









いや、何も、はねぇだろ……おい。





何かあんだろ、何か…。

















ーーー…また、明日…












「…また、明日」







そう言うと、彼女は目を丸くして。


次いで、顔をほころばせた。